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介護の申し送りとは?【2026年完全解説】書き方・例文8パターン・NG例とOK例・スムーズにするコツを徹底解説


介護の申し送り——書き方・例文・コツの完全解説 体調変化・転倒・夜勤引き継ぎ・新規入居者など例文8パターン・NG例とOK例の比較 SBAR活用法・5W1H・ICTツール・よくある悩みの対処法まで現場で即使える内容

📋 この記事でわかること

  • 申し送りとは何か——目的・意義・引き継ぎとの違い
  • 申し送りが行われる4つの場面(夜勤引き継ぎ・日勤交代・緊急時・朝礼・終礼)
  • 申し送りで伝えるべき内容——必須8項目と優先順位のつけ方
  • 申し送りの書き方・伝え方の5つのコツ(SBAR・5W1H・事実と意見の分離等)
  • 例文8パターン(体調変化・転倒・ヒヤリハット・服薬・夜勤引き継ぎ・新規入居者・認知症・看取り)
  • NG例とOK例の比較——「伝わらない申し送り」と「伝わる申し送り」の違い
  • メモの取り方・ノート・テンプレートの活用法
  • ICTツール(介護ソフト・タブレット)で申し送りを効率化する方法
  • 新人・苦手な人のためのよくある悩みと対処法
  • よくある質問(FAQ)7問

「申し送りがうまくできない」「何を伝えればいいのか分からない」「長くなりすぎてしまう」——介護の現場で働く方から最もよく聞かれる悩みのひとつが申し送りです。

申し送りは単なる情報伝達ではありません。利用者の命と安全を守るための最重要業務です。前のシフトで起きた体調変化・転倒リスク・服薬状況・家族からの要望を正確に次のスタッフに引き継ぐことで、24時間365日途切れることのない継続したケアが実現します。反対に申し送りのミスや漏れは、薬の飲み忘れ・転倒事故・利用者の苦痛の見落としという深刻な事態につながりかねません。

この記事では、介護現場で即使える申し送りの書き方・例文8パターン・NG例とOK例の比較・SBAR活用法まで、徹底的に解説します。

目次

申し送りとは——目的・意義・引き継ぎとの違い

申し送りの定義

申し送りとは、シフト交代の際に前任のスタッフが後任のスタッフへ、利用者に関する必要な情報を伝えることです。「申送り」と表記されることもあります。介護施設は24時間365日稼働しており、一人のスタッフが利用者の全時間を担当することは不可能です。そのため、各シフトで担当したスタッフが次のスタッフへ確実に情報をつなぐ申し送りは、施設の中核業務のひとつです。

申し送りの4つの目的

目的 具体的な意味
① 継続的なケアの実現 担当スタッフが変わっても、同じ水準のケアを提供するための情報を引き継ぐ
② 利用者・施設・職員の安全確保 転倒リスク・体調変化・事故の経緯を共有し再発と悪化を防ぐ
③ チームケアの質の向上 ケアマネ・看護師・リハビリ職・栄養士など多職種が申し送り内容を参照し、ケアプランの見直しに活かす
④ 記録・証拠の保全 事故・クレームが発生した際に、対応の経緯を正確に説明できる記録として機能する

「申し送り」と「引き継ぎ」の違い

日常的に混同されやすい「申し送り」と「引き継ぎ」ですが、意味合いが異なります。

用語 意味 特徴
申し送り シフト交代の際に必要な情報を後任者に伝えること 同一業務を複数人が交代で担う場面で使われる。日常的・定期的に発生する
引き継ぎ 前任者が退職・異動するため、後任者に業務全体を伝えること 情報を受け取る側はそれまでその業務に携わっていなかった場合が多い
💬 現役介護士が語る申し送りの重要性

「夜勤から日勤への申し送りで『夜中に2度トイレに起きて少し不安そうな様子だった』と伝えたことがあります。日勤のスタッフがその情報を元に声かけを増やしてくれたおかげで、その利用者様が体調不良の前兆に早期に気づけました。申し送りで命が救われることは本当にあります」(35歳・女性・特養勤務)

申し送りが行われる4つの場面

① 夜勤から日勤への申し送り(最も重要)

夜勤帯は施設スタッフが最も少ない時間帯であり、利用者の状態変化が最も見逃されやすい時間でもあります。夜間に起きた出来事(発熱・転倒・不眠・夜中の訴え・排泄の状況)を日勤スタッフに正確に伝えることが、朝からのケアの方向性を決める上で非常に重要です。

夜勤から日勤への申し送りで特に重要な情報は「体温・血圧・SpO2など夜間のバイタル変化」「転倒・ヒヤリハットの有無」「夜間の睡眠状況」「点滴・服薬の実施状況」「家族への報告が必要な事項」です。

② 日勤から夜勤への申し送り

日中は入浴介助・食事介助・レクリエーション・外出イベント・受診付き添いなど多くの業務があります。その中で起きた体調変化・利用者の様子・ケアプランの変更・医師からの指示内容を夜勤スタッフに確実に伝えます。特に「夜間に医療的な対応が必要になる可能性がある利用者の情報」は詳細に伝えることが重要です。

③ 朝礼・終礼での全体申し送り

朝礼では「その日の業務スケジュール」「入退所の情報」「受診や外出の予定」「特別注意が必要な利用者の情報」を全スタッフで共有します。終礼では「その日起きた出来事の振り返り」「翌日への引き継ぎ事項」を確認します。全スタッフが同じ認識を持ってシフトに入ることで、チームとしての対応力が高まります。

④ 緊急時・インシデント後の申し送り

転倒・急変・ヒヤリハットが発生した後は、緊急の申し送りが必要です。「いつ・どこで・誰が・何を・どのように対応したか」を時系列で詳細に記録・共有します。この記録は施設の事故報告書・ご家族への説明・再発防止策の立案に直接使用されるため、特に正確性が求められます。

申し送りで伝えるべき内容——必須8項目と優先順位

申し送りで何を伝えるかは施設や状況によって異なりますが、以下の8項目が介護現場での申し送りの主な内容です。優先順位が高い順に伝えることで、限られた時間の中でも重要な情報を確実に届けられます。

優先度 内容 具体例
🔴 最優先 体調変化・バイタルの異常 発熱・血圧変動・呼吸苦・意識レベルの変化・嘔吐・血尿等
🔴 最優先 転倒・事故・ヒヤリハット 転倒の経緯・対処内容・受傷の有無・再発防止のお願い
🟠 高優先 医師・看護師からの指示変更 服薬量の変更・食事形態の変更・特定の処置の開始・中止
🟠 高優先 服薬・医療処置の実施状況 飲み忘れ・服薬拒否・点滴の残量・次回投与時間
🟡 中優先 食事・水分・排泄の状況 食事摂取量・水分量・便秘の継続日数・下痢の回数
🟡 中優先 利用者の心理状態・様子の変化 表情の変化・不安・興奮・攻撃的言動・落ち込みの様子
🟢 通常 家族からの要望・連絡事項 家族からの電話内容・面会時の様子・要望・苦情
🟢 通常 次のシフトへのお願い事項 「午後3時に服薬確認をお願いします」「居室の様子を見ていただけますか」等
💡 優先順位のつけ方のコツ:申し送りを始める前に「このシフトで起きた中で、後任スタッフが最初に知っておくべき最重要事項は何か」を1〜2点に絞って頭に置きましょう。重要度の高いものから伝えることで、時間が足りなくなっても最低限の情報は確実に伝わります。

申し送りの書き方・伝え方——5つのコツ

コツ① SBAR(エスバー)フレームワークを使う

SBARは医療・看護の現場から生まれた情報伝達フレームワークで、介護の申し送りにも非常に有効です。「状況→背景→評価→依頼」の順番で情報を整理することで、聞き手がスムーズに状況を把握できます。

S
Situation(状況)——今何が起きているか
例:「A様が今朝から発熱しています。体温38.2℃です」
B
Background(背景)——これまでの経緯や関連する情報
例:「昨夕から食欲がなく、昨夜は夜中に1度起きていらっしゃいました」
A
Assessment(評価)——状況についての観察・判断
例:「風邪の初期症状の可能性があります。SpO2は97%で今のところ安定しています」
R
Recommendation(依頼)——後任スタッフへのお願い
例:「引き続き1時間ごとの検温をお願いします。看護師への報告は済んでいます」

SBARを使うことで「状況→原因→今後の対応」が自然に整理されます。最初は全部完璧に当てはめなくてもよいです。「今何が起きているか→背景→後任へのお願い」の3点を意識するだけでも申し送りの質が格段に上がります。

コツ② 5W1Hで情報の抜け漏れを防ぐ

5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識することで、申し送りの情報の抜け漏れを防げます。特に「誰が」(主語)は省略されやすいため意識的に明記しましょう。

5W1H 確認事項
When(いつ) 何時頃の出来事か 「14時30分ごろ」
Where(どこで) どの場所で起きたか 「食堂の入口付近で」
Who(誰が) 利用者名・スタッフ名 「A様が」「○○スタッフが対応し」
What(何を) 何が起きたか・何をしたか 「つまずいて転倒されました」
Why(なぜ) 考えられる原因(意見として) 「スリッパが脱げかかっていたためと思われます」
How(どのように) どう対応したか・今後のお願い 「看護師に報告し経過観察中です。本日は見守りを強化してください」

コツ③ 事実と意見・推測を必ず分ける

申し送りで最もよくある失敗が、観察した事実と自分の解釈・意見を混ぜてしまうことです。事実と意見が混在すると、後任スタッフが誤った判断をする可能性があります。

事実は「観察・測定・利用者の発言」などの客観的な情報です。意見は「〜と思われます」「〜の可能性があります」という形で明示して添えるのが正しい伝え方です。

コツ④ 重要事項は最初に伝える「結論ファースト」

申し送りは時間が限られています。時系列で話し始めると重要な情報にたどり着く前に時間が終わってしまうことがあります。「今日最も重要な申し送りは○○です」と最初に宣言してから詳細を説明する「結論ファースト」の伝え方が、聞き手に伝わりやすい申し送りの基本です。

コツ⑤ 曖昧な言葉を避け、数値・具体的な言動で表現する

「少し」「なんとなく」「たぶん」「いつもより」という曖昧な言葉は人によって解釈が異なります。体温・血圧・SpO2などの数値、食事摂取量(何割、何ml等)、利用者の具体的な発言(「しんどい」「痛い」等)で表現することで、後任スタッフが同じ認識を持てます。

例文8パターン——今すぐ使える申し送りの具体例

1体調変化(発熱)の申し送り
「B様の申し送りです。本日14時頃から発熱を確認しました。体温38.4℃、SpO2は97%、血圧は120/78mmHgです。昨日の夕食から食欲がなく、水分摂取量も午後だけで150ml程度と少ない状況でした。看護師に報告済みで、1時間ごとの検温と水分補給の促しを指示いただいています。夜勤帯でも引き続き検温と様子観察をお願いします。呼吸苦や意識レベルの変化があれば随時看護師に連絡してください。」
2転倒・ヒヤリハットの申し送り
「C様の申し送りです。本日15時20分、食堂入口付近にてC様が転倒されました。食事後、立ち上がりの際につまずいて前方に転倒。私が20秒以内に駆けつけたため頭部への打撲は確認されませんでしたが、右膝に軽度の擦り傷がありました。看護師が処置済みです。ご本人は『大丈夫』とおっしゃっていますが、今日は少し様子を見てください。インシデント報告書は記載済みです。また、C様は最近立ち上がりの際のふらつきが増えています。立ち上がり時の見守りを強化していただくようお願いします。」
3服薬拒否・服薬変更の申し送り
「D様の申し送りです。本日朝の服薬で内服を拒否されました。『薬は嫌いだから飲まない』とおっしゃり、説得しましたがご納得いただけず、主治医に連絡しました。医師から『今夜の服薬は1回飛ばして様子を見てよい』との指示をいただいています。夕食後の服薬は通常通り実施してください。服薬拒否があった場合は再度医師に報告するようご指示いただいています。また、D様は本日の昼食後から少し表情が硬い印象があります。気になることがあれば随時メモを残しておいてください。」
4夜勤から日勤への引き継ぎ申し送り
「夜勤帯の申し送りです。全体的には落ち着いた夜でした。特記事項が2件あります。まずE様ですが、午前2時頃に『胸が少し苦しい』とナースコールがありました。看護師が確認し、血圧143/92mmHg、SpO2 96%でした。10分後に再測定したところ血圧135/84mmHg・SpO2 98%に改善し、ご本人も楽になったとおっしゃいました。引き続き本日の日勤帯で様子を確認してください。次に、F様が夜中に3回トイレに起きていました。就寝前の水分は通常通りでしたが、明日の日中に水分摂取量を通常より少し控えめにしてみてはいかがでしょうか。他の入居者の方は特に変わった様子はありませんでした。バイタル記録は申し送りノートに記載済みです。」
5新規入居者の申し送り
「本日新規入居のG様(82歳・男性・要介護3)の申し送りです。既往歴は高血圧・軽度認知症。現在4種類の薬を内服中で、朝食後と夕食後の2回服薬があります。食事は普通食で、魚の骨と辛いものが苦手とのことです。トイレは自立ですが、夜間は廊下が分からなくなることがあるため、夜間は居室ドアを少し開けて光が入るようにするとよいとご家族から伺っています。お孫さんの話をされると表情が穏やかになります。何かお困りのことがあれば遠慮なく声かけしてくださいと伝えてあります。本日は慣れない環境で不安が強い可能性があります。こまめな声かけをお願いします。」
6認知症による問題行動の申し送り
「H様の申し送りです。本日16時頃、H様が他の入居者様の居室に入ろうとしていました。『帰らなきゃいけない』と繰り返しており、帰宅願望が強い状態でした。声かけで一時的に落ち着いていただきましたが、30分後にまた同様の行動が見られました。本日は合計3回確認しています。落ち着かれた際は『窓から外の景色を一緒に見る』という対応が有効でした。夕食後は少し穏やかになっていらっしゃいます。夜間も帰宅願望が出る可能性があります。他入居者様の居室への侵入につながる可能性があるため、夜勤帯も注意してください。対応が難しい場合はリーダーに相談してください。」
7家族からの要望・クレーム申し送り
「I様のご家族(長女様)から本日14時に電話がありました。内容は2点です。まず、最近I様が電話で『食事が美味しくない』と言うようになったとのことです。食事に関して確認してほしいとのご要望でした。次に、今週末の土曜日に面会に来られるご予定で、I様のお気に入りの洋服を持参されるとのことです。本日の夕食で食事の状況を確認し、記録に残していただければ幸いです。面会の件は週末担当スタッフに申し送りをお願いします。ご家族への折り返し電話は施設長が対応予定です。」
8体調急変・看取り期の申し送り
「J様の申し送りです。本日午後から全身状態が変化しています。食事は一口程度の摂取で水分もほとんど召し上がれていません。呼吸数は18〜22回/分でやや速め、SpO2は92〜94%と低下傾向です。看護師と主治医に報告済みで、医師から『看取りが近い可能性がある』との見解をいただいています。ご家族(長男様・次男様)へは看護師から本日17時に連絡済みで、明日午前中に面会に来られる予定です。J様はご本人の意思として「苦しいことはしないでほしい」とご意向を示されており、ご家族も同意されています。夜勤帯は30分ごとの状態確認をお願いします。呼吸の変化・顔色の変化があればすぐに看護師に連絡してください。」

NG例とOK例——「伝わらない申し送り」と「伝わる申し送り」の違い

ケース①:体調変化の申し送り

❌ NG例
「A様ですが、今日は何だか顔色が悪い感じがしました。あまり食欲がなさそうだったので、夜も様子を見ておいてください」
問題点:「顔色が悪い感じ」「食欲がなさそう」は主観的で曖昧。何を観察すればよいか不明。バイタルの数値がなく緊急性が判断できない。
✅ OK例
「A様の申し送りです。本日昼食の摂取量が普段の3割程度でした(通常はほぼ完食)。14時のバイタルで体温37.6℃(平熱36.2℃)を確認しました。本人に確認すると『少し気持ち悪い』とおっしゃっていました。看護師に報告済みで、引き続き様子観察の指示をいただいています。夜勤帯でも19時と22時に検温をお願いします。38℃を超える場合は看護師に連絡してください。」
改善点:食事摂取量・体温の数値・本人の発言という事実を明記。対応の依頼と緊急時の基準が明確。後任スタッフがすぐに行動できる。

ケース②:認知症利用者の行動についての申し送り

❌ NG例
「B様ですが昼食中にトイレに行きたかったのか急に歩き出していました。リスクが高いので見守りつくとか昼食前にトイレに寄るなどした方がいいと思います。私はその時C様の歯磨きを手伝っていました」
問題点:事実・意見・対応が混在。「私はその時」という不要な情報が含まれる。「見守りつくとか」という曖昧な表現で行動基準が不明確。
✅ OK例
「B様の申し送りです。本日12時15分、昼食中にB様が突然立ち上がり食堂内を歩き出しました。以前にも転倒の経緯があり転倒リスクが高い方です。立ち上がった際には都度見守り対応をお願いします。私の考えですが、昼食前にトイレに誘導してから食事を始めると落ち着かれやすいかもしれません。試していただけると幸いです。」
改善点:時刻・状況・既往(転倒歴)という事実を先に整理。依頼事項が明確。意見は「私の考えですが」と明示して分けている。

ケース③:転倒後の申し送り

❌ NG例
「D様が転んじゃいました。たぶんスリッパがずれてたからだと思います。大丈夫そうだったので経過観察です」
問題点:「たぶん」「大丈夫そう」は主観。受傷の有無・対処内容・看護師への報告有無が不明。次のスタッフが何をすべきか不明確。
✅ OK例
「D様の申し送りです。本日16時10分、廊下でD様が転倒されました。スリッパが脱げかかっていた状態での転倒と思われます。右膝に擦り傷(軽度)がありました。看護師が処置済みです。頭部への打撲・意識の変化はありませんでした。ご本人は『痛い』とおっしゃっていましたが現在は落ち着いています。インシデント報告書は提出済みです。夜間も膝の痛み・腫脹の有無を確認してください。D様は今後も転倒リスクが高いため、廊下歩行時の見守り強化をお願いします。」
改善点:時刻・状況・対処・受傷状況という事実を整理。看護師への報告済みを明記。次のシフトへの具体的なお願いが明確。

メモの取り方——申し送りを上手くするための記録術

メモを取るタイミングとポイント

「業務が終わってから申し送りを書こう」と思っていると、重要な詳細を忘れてしまいます。出来事が起きた直後・気になる変化を発見した直後にメモを取る習慣をつけることが、正確な申し送りの第一歩です。

メモは完璧な文章でなくてもよいです。箇条書き・キーワードだけ・数値と時刻だけでも十分です。「14:10 A様 体温38.4℃ 昼食3割」「15:20 B様 廊下にて転倒 右膝擦傷 看護師報告済」のような断片的なメモが、後の申し送り文章の元になります。

申し送りノート・テンプレートの活用

施設によっては申し送りノートやフォーマットが用意されています。フォーマットがない場合は自分でテンプレートを作ることで、抜け漏れを防げます。以下は基本的なテンプレートの例です。

項目 記入例
利用者名 A様(101号室)
日時 14時00分頃
状況(事実) 発熱38.4℃確認。昼食摂取量3割
対応した内容 看護師に報告。1時間おき検温の指示受領
次のシフトへのお願い 19時・22時の検温。38℃超は看護師連絡
備考(意見) 昨日から食欲低下あり。風邪の可能性あり
💬 メモの習慣づけで変わった体験談

「新人の頃、業務が終わってから申し送りを書こうとして内容を思い出せずに困りました。先輩から『気になることがあったらその場でポケットノートに一言書く』と教えてもらい実践したところ、申し送りが格段に楽になりました。今は業務用ポケットノートに時刻と利用者名だけでも書くことを徹底しています」(27歳・男性・有料老人ホーム勤務)

ICTツールを活用した申し送りの効率化

介護ソフト・タブレット記録の活用

近年の介護施設ではタブレットやスマートフォンを使った介護記録・申し送りシステムの導入が急速に進んでいます。介護ソフト(ほのぼのNEXT・カイポケ・ワムネット等)では、記録を入力すると全スタッフがリアルタイムに確認できる仕組みになっています。

ICTを活用した申し送りのメリットは以下の通りです。

  • リアルタイム共有——入力した記録が即座に全スタッフに届く。口頭引き継ぎの時間が短縮できる
  • 記録の正確性・保存性——紙のノートと違い、過去の記録を簡単に検索・参照できる
  • スタッフの負担軽減——手書き→タイピングや音声入力への移行で記録時間が短縮される施設が多い
  • 多職種共有——看護師・ケアマネ・管理栄養士が同じシステムで情報を確認できる

口頭申し送りとICTの使い分け

ICTが導入されても、緊急性の高い情報・微妙なニュアンスを伝える必要がある情報は口頭での申し送りが適しています。「テキスト記録で全体共有+緊急・重要事項は口頭で補足」という組み合わせが多くの施設で採用されています。

方法 適している場面 注意点
口頭 緊急性が高い情報・細かなニュアンスの共有・その場で質問・確認したい場合 言った・言わない問題が起きやすい。メモと組み合わせること
書面(ノート) 全スタッフへの周知事項・ICT未導入施設 読まれない・見落としのリスク。記録者の文章力に差が出る
ICT(介護ソフト) 日常的な記録の共有・過去情報の参照・多職種への共有 入力に慣れが必要。インターネット障害時のバックアップが必要

新人・苦手な人のためのよくある悩みと対処法

悩み①「何を言えばいいか分からなくなる」

申し送り直前に「何を言おうとしていたか」が飛んでしまう方は、先ほど紹介したメモを取る習慣が最善策です。加えて「今日の自分のシフトで一番重要だったことは何か」という問いかけを自分にしてみましょう。それが申し送りの最初の一言になります。「特記事項が1点あります」と宣言してから話し始めることで、自分も聞き手も集中できます。

悩み②「長くなりすぎてしまう」

申し送りが長くなる原因は「時系列で全部話してしまうこと」です。申し送りは「日記」ではなく「後任スタッフが知っておくべき最重要情報の要約」です。「次のシフトで何かアクションが必要か」という基準で情報を絞り込みましょう。行動が必要ない情報は記録に残しておけばよく、口頭で全部話す必要はありません。

悩み③「事実と意見の区別が難しい」

「事実」は誰が見ても同じように観察できること(体温の数値・利用者の発言・転倒の経緯)です。「意見」は自分の解釈・推測・提案です。申し送りをする際に「今言っていることは、見ていない人でも確認できる客観的な情報か」と自問するだけで、事実と意見の区別が自然にできるようになります。

悩み④「先輩のように流暢に話せない」

流暢に話せなくても、正確な情報が伝わることの方がはるかに重要です。多少詰まっても、手元のメモを見ながら話しても構いません。「えーと」「あのー」というつなぎ言葉は意識して減らすよう訓練しましょう。申し送り前に一度メモを見て「最初に言う一文」だけ決めておくと、スムーズに話し始められます。

悩み⑤「プライバシー情報の取り扱いが分からない」

申し送りで共有できる情報は「ケアに必要な情報」に限定されます。利用者の家族構成・職歴・経済状況などのプライバシーを興味本位で共有することは不適切です。また、申し送りは必ず関係スタッフのみがいる空間で行い、廊下や入居者が聞こえる場所での実施は避けましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 申し送りはどのくらいの長さが適切ですか?
A. 施設や状況によって異なりますが、1人の利用者について1〜3分程度が目安です。特記事項がない場合は「特変なし」(特に変わりなし)の一言で済む場合もあります。体調変化・転倒・緊急事項がある場合は必要な情報が全て伝わるまで話す必要がありますが、無関係な情報を含めずに要点のみを伝えることを心がけましょう。「後任スタッフがこれだけ知っていればケアができる」という情報量が適切な長さの目安です。
Q. 申し送りで「特変なし」と言っていいのはどんな場合ですか?
A. その利用者についてシフト中に体調変化・インシデント・家族からの連絡・ケアプランの変更など、次のスタッフに伝えるべき事項が何もなかった場合に「特変なし」が使えます。ただし、問題がないことを確認した上で使う言葉です。確認を怠って「特変なし」と言うのは危険です。夜勤帯は少なくとも定期巡回でのバイタル確認・様子観察を行い、その上で特変なしを判断しましょう。
Q. 申し送りをメモなしで話せるようになるにはどうすればいいですか?
A. 最初からメモなしで話すことにこだわる必要はありません。むしろ正確な情報を伝えるためにメモを活用することが推奨されています。ただし、習熟度を上げるためには「SBARの構造を頭に入れておくこと」「重要事項を3点以内に絞ること」「申し送り前に30秒考える時間を作ること」が有効です。経験を積むとメモなしでも自然に構造化して話せるようになります。
Q. ICTツール(介護ソフト)での記録と口頭申し送りはどちらが重要ですか?
A. 両方が重要で、補完的な関係にあります。ICTは記録の正確性・保存性・多職種共有に優れており、口頭は緊急性・細かいニュアンス・その場での質疑応答に優れています。「日常的な記録はICTで共有+緊急・重要事項は口頭で補足」という組み合わせが多くの施設で有効です。ICTの記録は「参照・後確認」、口頭は「重要事項の確実な伝達」という役割分担で使い分けましょう。
Q. 夜勤帯の申し送りで特に気をつけることは何ですか?
A. 夜勤帯は人員が少なく一人で複数の利用者を担当するため、申し送りの内容が次の日勤スタッフの判断に直結します。特に注意すべきは①バイタルの変化を数値で正確に伝える ②夜間に起きたこと(転倒・訴え・不眠)は詳細に記録する ③「経過観察」と伝える場合は具体的に「何をどのように観察するか」まで伝える ④緊急性がある場合は申し送りを待たず、日勤到着時に優先して伝える——の4点です。
Q. 口頭申し送りで「言った・言わなかった」の問題が起きた場合はどうすればいいですか?
A. このトラブルを防ぐには、口頭申し送りと同時に記録(申し送りノート・ICT)にも残す習慣をつけることが最善策です。既にトラブルが起きた場合は、当事者間で感情的にならず「次回からはどうするか」という改善策の話し合いに移ることが重要です。施設としての対応としては「口頭申し送り後にICTへの記録入力を義務化」「申し送りの際に受領確認のサインをもらう」といったシステム的な対策が有効です。
Q. 「申し送りが苦手」で転職も考えています。他の職場では申し送りの負担は変わりますか?
A. 施設によって申し送りの方法・負担はかなり異なります。ICTが充実している施設は口頭申し送りの時間が短縮されており、タブレット記録で業務中にリアルタイム入力するため「後でまとめて記録」というプレッシャーが少ないです。また、デイサービスは夜勤がないため申し送りのパターンが少なく、新人でも取り組みやすい傾向があります。転職を検討する場合は転職エージェントに「ICT活用が進んでいる施設」「申し送り体制が整っている施設」という条件で探してもらうことができます。

まとめ——申し送りは「チームケアのバトンリレー」

申し送りは、利用者の安全と質の高いケアを24時間途切れなく提供するための「情報のバトンリレー」です。完璧な申し送りを最初からできる必要はありません。まずは以下の3点を意識することから始めましょう。

  • 出来事が起きたその場でメモを取る習慣をつける——後で思い出そうとすると詳細が抜ける
  • 最重要事項を最初に宣言してから話す——「特記事項が1点あります」から始めることで聞き手も集中できる
  • 事実(数値・発言)と意見(〜と思われます)を分けて伝える——これだけで申し送りの質が大幅に上がる

申し送りのスキルは経験とともに必ず向上します。先輩スタッフの申し送りをよく聞いて「なぜ伝わりやすいか」を分析し、少しずつ自分のスタイルに取り入れていきましょう。

※本記事は2026年4月時点の介護現場の一般的な申し送りの方法をもとに作成しています。施設・法人によって申し送りの方法・フォーマット・運用ルールは異なります。必ず勤務先の方針に従ってください。


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