📋 この記事でわかること
- 申し送りとは何か——目的・意義・引き継ぎとの違い
- 申し送りが行われる4つの場面(夜勤引き継ぎ・日勤交代・緊急時・朝礼・終礼)
- 申し送りで伝えるべき内容——必須8項目と優先順位のつけ方
- 申し送りの書き方・伝え方の5つのコツ(SBAR・5W1H・事実と意見の分離等)
- 例文8パターン(体調変化・転倒・ヒヤリハット・服薬・夜勤引き継ぎ・新規入居者・認知症・看取り)
- NG例とOK例の比較——「伝わらない申し送り」と「伝わる申し送り」の違い
- メモの取り方・ノート・テンプレートの活用法
- ICTツール(介護ソフト・タブレット)で申し送りを効率化する方法
- 新人・苦手な人のためのよくある悩みと対処法
- よくある質問(FAQ)7問
「申し送りがうまくできない」「何を伝えればいいのか分からない」「長くなりすぎてしまう」——介護の現場で働く方から最もよく聞かれる悩みのひとつが申し送りです。
申し送りは単なる情報伝達ではありません。利用者の命と安全を守るための最重要業務です。前のシフトで起きた体調変化・転倒リスク・服薬状況・家族からの要望を正確に次のスタッフに引き継ぐことで、24時間365日途切れることのない継続したケアが実現します。反対に申し送りのミスや漏れは、薬の飲み忘れ・転倒事故・利用者の苦痛の見落としという深刻な事態につながりかねません。
この記事では、介護現場で即使える申し送りの書き方・例文8パターン・NG例とOK例の比較・SBAR活用法まで、徹底的に解説します。
申し送りとは——目的・意義・引き継ぎとの違い
申し送りの定義
申し送りとは、シフト交代の際に前任のスタッフが後任のスタッフへ、利用者に関する必要な情報を伝えることです。「申送り」と表記されることもあります。介護施設は24時間365日稼働しており、一人のスタッフが利用者の全時間を担当することは不可能です。そのため、各シフトで担当したスタッフが次のスタッフへ確実に情報をつなぐ申し送りは、施設の中核業務のひとつです。
申し送りの4つの目的
| 目的 | 具体的な意味 |
|---|---|
| ① 継続的なケアの実現 | 担当スタッフが変わっても、同じ水準のケアを提供するための情報を引き継ぐ |
| ② 利用者・施設・職員の安全確保 | 転倒リスク・体調変化・事故の経緯を共有し再発と悪化を防ぐ |
| ③ チームケアの質の向上 | ケアマネ・看護師・リハビリ職・栄養士など多職種が申し送り内容を参照し、ケアプランの見直しに活かす |
| ④ 記録・証拠の保全 | 事故・クレームが発生した際に、対応の経緯を正確に説明できる記録として機能する |
「申し送り」と「引き継ぎ」の違い
日常的に混同されやすい「申し送り」と「引き継ぎ」ですが、意味合いが異なります。
| 用語 | 意味 | 特徴 |
|---|---|---|
| 申し送り | シフト交代の際に必要な情報を後任者に伝えること | 同一業務を複数人が交代で担う場面で使われる。日常的・定期的に発生する |
| 引き継ぎ | 前任者が退職・異動するため、後任者に業務全体を伝えること | 情報を受け取る側はそれまでその業務に携わっていなかった場合が多い |
「夜勤から日勤への申し送りで『夜中に2度トイレに起きて少し不安そうな様子だった』と伝えたことがあります。日勤のスタッフがその情報を元に声かけを増やしてくれたおかげで、その利用者様が体調不良の前兆に早期に気づけました。申し送りで命が救われることは本当にあります」(35歳・女性・特養勤務)
申し送りが行われる4つの場面
① 夜勤から日勤への申し送り(最も重要)
夜勤帯は施設スタッフが最も少ない時間帯であり、利用者の状態変化が最も見逃されやすい時間でもあります。夜間に起きた出来事(発熱・転倒・不眠・夜中の訴え・排泄の状況)を日勤スタッフに正確に伝えることが、朝からのケアの方向性を決める上で非常に重要です。
夜勤から日勤への申し送りで特に重要な情報は「体温・血圧・SpO2など夜間のバイタル変化」「転倒・ヒヤリハットの有無」「夜間の睡眠状況」「点滴・服薬の実施状況」「家族への報告が必要な事項」です。
② 日勤から夜勤への申し送り
日中は入浴介助・食事介助・レクリエーション・外出イベント・受診付き添いなど多くの業務があります。その中で起きた体調変化・利用者の様子・ケアプランの変更・医師からの指示内容を夜勤スタッフに確実に伝えます。特に「夜間に医療的な対応が必要になる可能性がある利用者の情報」は詳細に伝えることが重要です。
③ 朝礼・終礼での全体申し送り
朝礼では「その日の業務スケジュール」「入退所の情報」「受診や外出の予定」「特別注意が必要な利用者の情報」を全スタッフで共有します。終礼では「その日起きた出来事の振り返り」「翌日への引き継ぎ事項」を確認します。全スタッフが同じ認識を持ってシフトに入ることで、チームとしての対応力が高まります。
④ 緊急時・インシデント後の申し送り
転倒・急変・ヒヤリハットが発生した後は、緊急の申し送りが必要です。「いつ・どこで・誰が・何を・どのように対応したか」を時系列で詳細に記録・共有します。この記録は施設の事故報告書・ご家族への説明・再発防止策の立案に直接使用されるため、特に正確性が求められます。
申し送りで伝えるべき内容——必須8項目と優先順位
申し送りで何を伝えるかは施設や状況によって異なりますが、以下の8項目が介護現場での申し送りの主な内容です。優先順位が高い順に伝えることで、限られた時間の中でも重要な情報を確実に届けられます。
| 優先度 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 🔴 最優先 | 体調変化・バイタルの異常 | 発熱・血圧変動・呼吸苦・意識レベルの変化・嘔吐・血尿等 |
| 🔴 最優先 | 転倒・事故・ヒヤリハット | 転倒の経緯・対処内容・受傷の有無・再発防止のお願い |
| 🟠 高優先 | 医師・看護師からの指示変更 | 服薬量の変更・食事形態の変更・特定の処置の開始・中止 |
| 🟠 高優先 | 服薬・医療処置の実施状況 | 飲み忘れ・服薬拒否・点滴の残量・次回投与時間 |
| 🟡 中優先 | 食事・水分・排泄の状況 | 食事摂取量・水分量・便秘の継続日数・下痢の回数 |
| 🟡 中優先 | 利用者の心理状態・様子の変化 | 表情の変化・不安・興奮・攻撃的言動・落ち込みの様子 |
| 🟢 通常 | 家族からの要望・連絡事項 | 家族からの電話内容・面会時の様子・要望・苦情 |
| 🟢 通常 | 次のシフトへのお願い事項 | 「午後3時に服薬確認をお願いします」「居室の様子を見ていただけますか」等 |
申し送りの書き方・伝え方——5つのコツ
コツ① SBAR(エスバー)フレームワークを使う
SBARは医療・看護の現場から生まれた情報伝達フレームワークで、介護の申し送りにも非常に有効です。「状況→背景→評価→依頼」の順番で情報を整理することで、聞き手がスムーズに状況を把握できます。
SBARを使うことで「状況→原因→今後の対応」が自然に整理されます。最初は全部完璧に当てはめなくてもよいです。「今何が起きているか→背景→後任へのお願い」の3点を意識するだけでも申し送りの質が格段に上がります。
コツ② 5W1Hで情報の抜け漏れを防ぐ
5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識することで、申し送りの情報の抜け漏れを防げます。特に「誰が」(主語)は省略されやすいため意識的に明記しましょう。
| 5W1H | 確認事項 | 例 |
|---|---|---|
| When(いつ) | 何時頃の出来事か | 「14時30分ごろ」 |
| Where(どこで) | どの場所で起きたか | 「食堂の入口付近で」 |
| Who(誰が) | 利用者名・スタッフ名 | 「A様が」「○○スタッフが対応し」 |
| What(何を) | 何が起きたか・何をしたか | 「つまずいて転倒されました」 |
| Why(なぜ) | 考えられる原因(意見として) | 「スリッパが脱げかかっていたためと思われます」 |
| How(どのように) | どう対応したか・今後のお願い | 「看護師に報告し経過観察中です。本日は見守りを強化してください」 |
コツ③ 事実と意見・推測を必ず分ける
申し送りで最もよくある失敗が、観察した事実と自分の解釈・意見を混ぜてしまうことです。事実と意見が混在すると、後任スタッフが誤った判断をする可能性があります。
事実は「観察・測定・利用者の発言」などの客観的な情報です。意見は「〜と思われます」「〜の可能性があります」という形で明示して添えるのが正しい伝え方です。
コツ④ 重要事項は最初に伝える「結論ファースト」
申し送りは時間が限られています。時系列で話し始めると重要な情報にたどり着く前に時間が終わってしまうことがあります。「今日最も重要な申し送りは○○です」と最初に宣言してから詳細を説明する「結論ファースト」の伝え方が、聞き手に伝わりやすい申し送りの基本です。
コツ⑤ 曖昧な言葉を避け、数値・具体的な言動で表現する
「少し」「なんとなく」「たぶん」「いつもより」という曖昧な言葉は人によって解釈が異なります。体温・血圧・SpO2などの数値、食事摂取量(何割、何ml等)、利用者の具体的な発言(「しんどい」「痛い」等)で表現することで、後任スタッフが同じ認識を持てます。
例文8パターン——今すぐ使える申し送りの具体例
NG例とOK例——「伝わらない申し送り」と「伝わる申し送り」の違い
ケース①:体調変化の申し送り
ケース②:認知症利用者の行動についての申し送り
ケース③:転倒後の申し送り
メモの取り方——申し送りを上手くするための記録術
メモを取るタイミングとポイント
「業務が終わってから申し送りを書こう」と思っていると、重要な詳細を忘れてしまいます。出来事が起きた直後・気になる変化を発見した直後にメモを取る習慣をつけることが、正確な申し送りの第一歩です。
メモは完璧な文章でなくてもよいです。箇条書き・キーワードだけ・数値と時刻だけでも十分です。「14:10 A様 体温38.4℃ 昼食3割」「15:20 B様 廊下にて転倒 右膝擦傷 看護師報告済」のような断片的なメモが、後の申し送り文章の元になります。
申し送りノート・テンプレートの活用
施設によっては申し送りノートやフォーマットが用意されています。フォーマットがない場合は自分でテンプレートを作ることで、抜け漏れを防げます。以下は基本的なテンプレートの例です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 利用者名 | A様(101号室) |
| 日時 | 14時00分頃 |
| 状況(事実) | 発熱38.4℃確認。昼食摂取量3割 |
| 対応した内容 | 看護師に報告。1時間おき検温の指示受領 |
| 次のシフトへのお願い | 19時・22時の検温。38℃超は看護師連絡 |
| 備考(意見) | 昨日から食欲低下あり。風邪の可能性あり |
「新人の頃、業務が終わってから申し送りを書こうとして内容を思い出せずに困りました。先輩から『気になることがあったらその場でポケットノートに一言書く』と教えてもらい実践したところ、申し送りが格段に楽になりました。今は業務用ポケットノートに時刻と利用者名だけでも書くことを徹底しています」(27歳・男性・有料老人ホーム勤務)
ICTツールを活用した申し送りの効率化
介護ソフト・タブレット記録の活用
近年の介護施設ではタブレットやスマートフォンを使った介護記録・申し送りシステムの導入が急速に進んでいます。介護ソフト(ほのぼのNEXT・カイポケ・ワムネット等)では、記録を入力すると全スタッフがリアルタイムに確認できる仕組みになっています。
ICTを活用した申し送りのメリットは以下の通りです。
- リアルタイム共有——入力した記録が即座に全スタッフに届く。口頭引き継ぎの時間が短縮できる
- 記録の正確性・保存性——紙のノートと違い、過去の記録を簡単に検索・参照できる
- スタッフの負担軽減——手書き→タイピングや音声入力への移行で記録時間が短縮される施設が多い
- 多職種共有——看護師・ケアマネ・管理栄養士が同じシステムで情報を確認できる
口頭申し送りとICTの使い分け
ICTが導入されても、緊急性の高い情報・微妙なニュアンスを伝える必要がある情報は口頭での申し送りが適しています。「テキスト記録で全体共有+緊急・重要事項は口頭で補足」という組み合わせが多くの施設で採用されています。
| 方法 | 適している場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 口頭 | 緊急性が高い情報・細かなニュアンスの共有・その場で質問・確認したい場合 | 言った・言わない問題が起きやすい。メモと組み合わせること |
| 書面(ノート) | 全スタッフへの周知事項・ICT未導入施設 | 読まれない・見落としのリスク。記録者の文章力に差が出る |
| ICT(介護ソフト) | 日常的な記録の共有・過去情報の参照・多職種への共有 | 入力に慣れが必要。インターネット障害時のバックアップが必要 |
新人・苦手な人のためのよくある悩みと対処法
悩み①「何を言えばいいか分からなくなる」
申し送り直前に「何を言おうとしていたか」が飛んでしまう方は、先ほど紹介したメモを取る習慣が最善策です。加えて「今日の自分のシフトで一番重要だったことは何か」という問いかけを自分にしてみましょう。それが申し送りの最初の一言になります。「特記事項が1点あります」と宣言してから話し始めることで、自分も聞き手も集中できます。
悩み②「長くなりすぎてしまう」
申し送りが長くなる原因は「時系列で全部話してしまうこと」です。申し送りは「日記」ではなく「後任スタッフが知っておくべき最重要情報の要約」です。「次のシフトで何かアクションが必要か」という基準で情報を絞り込みましょう。行動が必要ない情報は記録に残しておけばよく、口頭で全部話す必要はありません。
悩み③「事実と意見の区別が難しい」
「事実」は誰が見ても同じように観察できること(体温の数値・利用者の発言・転倒の経緯)です。「意見」は自分の解釈・推測・提案です。申し送りをする際に「今言っていることは、見ていない人でも確認できる客観的な情報か」と自問するだけで、事実と意見の区別が自然にできるようになります。
悩み④「先輩のように流暢に話せない」
流暢に話せなくても、正確な情報が伝わることの方がはるかに重要です。多少詰まっても、手元のメモを見ながら話しても構いません。「えーと」「あのー」というつなぎ言葉は意識して減らすよう訓練しましょう。申し送り前に一度メモを見て「最初に言う一文」だけ決めておくと、スムーズに話し始められます。
悩み⑤「プライバシー情報の取り扱いが分からない」
申し送りで共有できる情報は「ケアに必要な情報」に限定されます。利用者の家族構成・職歴・経済状況などのプライバシーを興味本位で共有することは不適切です。また、申し送りは必ず関係スタッフのみがいる空間で行い、廊下や入居者が聞こえる場所での実施は避けましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 申し送りはどのくらいの長さが適切ですか?
Q. 申し送りで「特変なし」と言っていいのはどんな場合ですか?
Q. 申し送りをメモなしで話せるようになるにはどうすればいいですか?
Q. ICTツール(介護ソフト)での記録と口頭申し送りはどちらが重要ですか?
Q. 夜勤帯の申し送りで特に気をつけることは何ですか?
Q. 口頭申し送りで「言った・言わなかった」の問題が起きた場合はどうすればいいですか?
Q. 「申し送りが苦手」で転職も考えています。他の職場では申し送りの負担は変わりますか?
まとめ——申し送りは「チームケアのバトンリレー」
申し送りは、利用者の安全と質の高いケアを24時間途切れなく提供するための「情報のバトンリレー」です。完璧な申し送りを最初からできる必要はありません。まずは以下の3点を意識することから始めましょう。
- 出来事が起きたその場でメモを取る習慣をつける——後で思い出そうとすると詳細が抜ける
- 最重要事項を最初に宣言してから話す——「特記事項が1点あります」から始めることで聞き手も集中できる
- 事実(数値・発言)と意見(〜と思われます)を分けて伝える——これだけで申し送りの質が大幅に上がる
申し送りのスキルは経験とともに必ず向上します。先輩スタッフの申し送りをよく聞いて「なぜ伝わりやすいか」を分析し、少しずつ自分のスタイルに取り入れていきましょう。
※本記事は2026年4月時点の介護現場の一般的な申し送りの方法をもとに作成しています。施設・法人によって申し送りの方法・フォーマット・運用ルールは異なります。必ず勤務先の方針に従ってください。
