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ターミナルケアとは【2026年完全ガイド】緩和ケア・看取りとの違い・場所・費用・家族ができることを徹底解説


この記事は、大切な人の終末期を前に悩んでいる方、または介護・医療職としてターミナルケアに携わる方のために書かれています。難しい時期に読んでいただいていることへの敬意を込めて、できるだけわかりやすく、正確な情報をお伝えします。

📋 この記事でわかること

  • ターミナルケアの定義・「終末期」とはいつから始まるか
  • 緩和ケア・ホスピスケア・看取りケアとの違いをわかりやすく整理
  • ターミナルケアの3つの内容(身体的・精神的・社会的ケア)
  • 場所別の特徴(在宅・介護施設・病院/ホスピス)
  • 在宅・施設・病院それぞれの費用目安
  • ACP(アドバンス・ケア・プランニング)=人生会議とは何か
  • 家族が今からできること・準備しておくべきこと
  • 介護・看護職員の役割
  • 「自宅で最期を迎えたい」という願望と現実の乖離
  • 体験談・よくある質問

「ターミナルケアとは何ですか」「緩和ケアとどう違うのですか」「家族に何ができるでしょうか」——これらは、大切な人の終末期を迎えた方が最も多く持つ疑問です。

ターミナルケアは、治療による回復が見込めなくなった終末期に、本人が残された時間を穏やかに、自分らしく過ごせるように支援するケアです。延命を目的とせず、身体的・精神的・社会的な苦痛を和らげることに重点を置きます。

この概念は1960年代にイギリスのホスピス運動から始まり、日本では1980年代以降に緩和ケアの発展とともに広まりました。現在は病院だけでなく、自宅・介護施設・ホスピス型住宅など多様な場所でターミナルケアが提供されています。

目次

ターミナルケアとは——定義と「終末期」の考え方

📌 ターミナルケアの概要

別名終末期医療・終末期ケア・終末期看護
目的延命ではなく、残された時間のQOL(生活の質)の向上と苦痛の緩和
開始時期「そう遠くない時期に死に至るであろう」と医師が判断した時期から
対象者疾患・老衰・障害等で回復が見込めない終末期の方(年齢・疾患の制限なし)
実施場所在宅・介護施設・病院(緩和ケア病棟)・ホスピス
関わる職種医師・看護師・介護職員・社会福祉士・薬剤師・心理士・ケアマネジャーなど

「終末期」とはいつから始まるか

公益社団法人全日本病院協会の「終末期医療に関するガイドライン」によると、終末期とは以下の3つの条件が揃った場合を指します。

  1. 主治医と主治医以外の医師が「更に行うべき治療法がなく、回復が期待できない」と判断が一致すること
  2. 患者・家族・医療・ケアチームが患者の死を予測し対応を考えていること
  3. 患者が意識のある場合は、患者・家族・医療チームが十分に話し合い納得していること

つまり、終末期かどうかは医師一人の独断で決めるのではなく、複数の専門家と患者・家族が関わって判断されます。余命については「数週間〜半年程度で死を迎えると予想される時期」が一般的な目安とされていますが、疾患によって異なります。

💡 日本医師会の定義:日本医師会はターミナル期(終末期)を「治療方針を決める際に、患者はそう遠くない時期に死に至るであろうことに配慮する」時期と定義しています。この「そう遠くない時期」という表現が、ターミナルケアの開始時期の難しさを物語っています——明確な線引きはなく、患者・家族・医療チームが対話しながら決めていくものです。

ターミナルケア・緩和ケア・ホスピスケア・看取りケアの違い

「ターミナルケア」「緩和ケア」「ホスピスケア」「看取りケア」——似ているようで意味が異なるこれらの言葉を整理します。

用語 開始時期 対象者 主な内容 実施場所
ターミナルケア 終末期(死が近い時期) 疾患・老衰を問わず終末期の全ての方 苦痛緩和+延命しない選択。医療的処置を含む 在宅・施設・病院
緩和ケア 診断時から(終末期に限らない) 命に関わる疾患の全ての方(治療中の方も対象) 苦痛の予防と緩和。治療と並行して行われる 病院・在宅・施設
ホスピスケア 終末期 主にがん・エイズ患者(若年〜高齢者) 痛みの緩和+全人的なケア。チームアプローチ ホスピス・緩和ケア病棟
看取りケア 最期が近い時期(数日〜数週間) 主に高齢者(在宅・施設) 医療行為より日常生活ケア中心。人間の尊厳を守る 在宅・介護施設

「緩和ケア」と「ターミナルケア」の最も重要な違い

最も混同されやすいのが緩和ケアとターミナルケアの違いです。その核心は「いつ始まるか」と「生き方か死に方か」という視点の違いにあります。

  • 緩和ケア:がんと診断されたその日から始められます。治療と並行して行われ、身体的・精神的苦痛を和らげながら「いかに生きるか」(QOLの向上)に焦点を当てます。WHO(世界保健機関)に国際的な定義があります
  • ターミナルケア:回復が見込めなくなった終末期に始まります。延命より「いかに穏やかに最期を迎えるか」に焦点を当てます。国際的に統一された定義はなく、現場では緩和ケアの一部として実施されることが多いです
💡 実際の現場では:緩和ケアとターミナルケアを厳密に区別することは難しく、終末期が近づくにつれて緩和ケアの割合が増え、やがてターミナルケアへと移行していく連続的なプロセスとして捉えることが自然です。

「看取り」と「ターミナルケア」の違い

両者は重なり合う部分がありますが、大きな違いは「医療行為があるかどうか」です。

  • ターミナルケア:医療行為(点滴・投薬・酸素吸入など)を含む終末期のケア全般を指します
  • 看取りケア:医療行為はせず、食事・入浴・排泄などの日常生活ケアと心理的なサポートを中心に、尊厳を守りながら自然な死を見届けるケアです

ターミナルケアの3つの内容

🩺
身体的ケア
・痛みの緩和(投薬・点滴)
・呼吸困難・倦怠感への対処
・食事・排泄・入浴の介助
・褥瘡(床ずれ)予防
・酸素吸入・医療処置
・口腔ケア・清拭
💬
精神的ケア
・死への恐怖・不安への傾聴
・家族・友人との面会時間確保
・カウンセリング・心理士の介入
・スピリチュアルケア(宗教的ニーズへの配慮)
・環境の整備(安心できる空間作り)
・本人の「やり残したこと」への支援

身体的ケア——苦痛を和らげる

終末期に現れやすい症状として、痛み・呼吸困難・全身の倦怠感・食欲不振・浮腫(むくみ)・嘔気などがあります。身体的ケアの最優先課題は、これらの苦痛を最小化することです。

医師による投薬(オピオイド鎮痛薬など)や点滴で痛みをコントロールし、看護師・介護職員が日常のケア(体位変換・清拭・口腔ケアなど)で快適な状態を保ちます。「痛みさえなければ話ができる」「苦しくなければ家族と時間を過ごせる」——身体的苦痛の軽減が、他のあらゆるケアの土台になります。

精神的ケア——不安と恐怖に寄り添う

終末期の方は、死への恐怖・家族への心配・やり残したことへの後悔・孤独感など、さまざまな精神的苦痛を抱えます。精神的ケアの核心は「傾聴」——ただそこにいて、話を聴き、否定せず、寄り添うことです。

医療職・介護職だけでなく、家族・友人・宗教家・心理士・ボランティアなど多くの人が精神的ケアの担い手になれます。「何か特別なことをしなければ」と思う必要はなく、側にいて手を握り、思い出話をすることが何よりの支えになることも多いです。

社会的ケア——家族も含めた総合的な支援

終末期は本人だけでなく、家族にとっても大きな試練の時期です。医療費・介護費用の負担・仕事との両立・精神的疲弊など、家族が直面する課題は多岐にわたります。社会的ケアは、本人と家族の両方を支えることを目的とします。

医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが、費用の相談・補助制度の案内・在宅移行の調整・グリーフケア(遺族ケア)などを担います。

ターミナルケアを受ける場所——在宅・施設・病院の比較

🏠

在宅(自宅でのターミナルケア)
訪問診療・訪問看護・訪問介護・ケアマネジャーが連携してサポート

  • 住み慣れた自宅で過ごせる——本人にとって最も安心できる環境。思い出の場所で最期を迎えられる
  • 家族と自由に過ごせる——面会時間の制限なし。ペットと一緒に過ごすことも可能
  • 本人の意思が反映されやすい——食事・起床時間・過ごし方を自由に決められる
  • 家族の介護負担が大きい——24時間の見守り・介護が家族に求められる
  • 急変時の対応が不安——夜間・休日の急変時に医療機関と連携が必要
  • 一定の環境整備が必要——介護ベッド・手すり・バリアフリー化など住宅改修が必要な場合がある
在宅でターミナルケアを行う場合は「在宅療養支援診療所」や「機能強化型在宅療養支援診療所」と連携することが重要です。24時間対応の訪問診療体制を持つクリニックと契約することで、夜間の急変時も電話で相談・往診してもらえます。
🏥

介護施設(特養・老健・有料老人ホームなど)
看取り介護加算の対象施設で専門スタッフが連携

  • 家族の介護負担が軽減される——専門スタッフが常駐。家族は心理的サポートに集中できる
  • 24時間の介護体制がある——夜間でもスタッフが対応
  • なじみのスタッフ・環境で過ごせる——長期入居の場合は関係性が築かれている
  • 医療対応には限界がある——施設によって医療ケアの対応範囲が異なる。急変時は病院搬送になる場合がある
  • 施設によって看取り体制の差が大きい——看取り加算取得有無・医療連携の質を確認する必要がある
平成18年の介護報酬改定で「看取り介護加算」が創設されました。医師が終末期ケアを必要と判断し家族が同意した場合、死亡前30日間を限度として加算されます(死亡当日は1,280点、前日・前々日は680点、4〜30日前は144点)。全国老人保健施設協会の2023年度調査では、約8割の介護施設が「看取りに対応している」と報告されています。
🏨

病院・ホスピス(緩和ケア病棟)
専門的な医療処置・緩和ケアチームによる対応

  • 最も高度な医療対応が可能——急変時の対応が最も安心。専門医・緩和ケアチームが常駐
  • 痛みの管理に専門的な知識がある——オピオイド鎮痛薬等の使用・調整も専門チームが対応
  • 緩和ケア病棟の対象は原則がん・エイズ患者——老衰・認知症の方には適用されない場合がある
  • 面会時間の制限がある施設もある——自由に家族と過ごせない場合がある
  • 医療費がかさむ場合がある——長期入院では費用が増大する
2024年6月時点で緩和ケア病棟がある施設は468施設・病床数9,746床(日本ホスピス緩和ケア協会調査)。高齢化により過去25年間で5倍以上に増加しています。ただし厚生労働省が承認する緩和ケア病棟の対象は原則としてがん患者・エイズ患者のみです。

費用の目安

在宅ターミナルケア(月額)
2〜10万円程度
訪問診療・訪問看護・介護サービスの合算。1〜3割負担

介護施設(月額)
8〜20万円程度
施設種別・部屋タイプによって大きく異なる

病院(緩和ケア病棟)(月額)
10〜25万円程度
高額療養費制度の適用で自己負担は月5.7万円〜(後期高齢者は月1.4万円〜)

費用を軽減できる制度

  • 高額療養費制度:1ヶ月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超過分が返還される。75歳以上(後期高齢者)は上限が低く設定されており、例えば月100万円の医療費でも実質負担は月5.7万円〜となる
  • 高額介護合算療養費制度:医療費と介護費の年間合計が上限を超えた場合に超過分が返還される
  • 身体障害者手帳・難病医療費助成:特定の疾患がある場合は医療費の自己負担額が大幅に軽減される
  • 生活保護:経済的に困窮している場合は生活保護の医療扶助・介護扶助が利用できる

※費用は利用するサービス・施設の種別・地域・保険の種類によって大きく異なります。詳細は担当ケアマネジャーまたは医療ソーシャルワーカーにご相談ください。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)——「人生会議」の重要性

🗣️ ACP(アドバンス・ケア・プランニング)=「人生会議」とは

ACPとは、本人が意思決定能力を失う前に、自分が望む医療やケアについて、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うプロセスです。厚生労働省は2018年11月にACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」と定め、普及を推進しています。

人生会議で話し合うべき主なテーマ:

  • 延命措置(心肺蘇生・人工呼吸器・胃ろうなど)を希望するかどうか
  • 最期をどこで迎えたいか(自宅・施設・病院)
  • 意識がなくなった場合に医療の判断を誰に委ねるか(医療代理人)
  • 葬儀・お墓・遺産についての希望
  • 家族・大切な人へ伝えたいこと

厚生労働省の調査では、自宅での看取りを希望する人は全体の50%以上ですが、実際に自宅で最期を迎える人は全体の20%程度にとどまります(2023年度人口動態統計)。「希望」と「現実」の乖離を縮めるためには、元気なうちから家族と話し合いをしておくことが重要です。

意思決定が困難な場合の厚生労働省のガイドライン

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)では、以下の原則が示されています。

  1. 本人が意思を示せる場合:本人による意思決定を最優先とする
  2. 本人が意思を示せない場合:家族等が本人の意思を推定できる場合はその推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとる
  3. 家族等も推定できない場合:医療・ケアチームが家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとる

自宅で最期を迎えるための準備

「最期は自宅で過ごしたい」という希望を実現するには、事前の準備が必要です。

1
在宅療養支援診療所を探す——24時間対応の往診・訪問診療が可能なクリニックと事前に契約する。「機能強化型在宅療養支援診療所」は複数の医師・看護師体制で対応力が高い
2
訪問看護ステーションと契約する——看護師が定期的に訪問し、医療的処置・状態観察・家族への指導を行う。ターミナル期は医療保険での利用が可能(通常週3回→毎日も可能)
3
ケアマネジャーに相談してサービスを整える——訪問介護・訪問入浴・福祉用具などの在宅サービスを組み合わせて、介護が必要な生活を支える体制を整える
4
急変時の対応方針を家族で決めておく——「急変時に救急車を呼ぶか・呼ばないか」「蘇生処置を希望するかどうか」を在宅医・家族・本人で事前に合意しておく(指示書の作成)
5
家族が休める体制を作る——介護者が疲弊すると在宅継続が難しくなる。ショートステイ・レスパイト(休息)入院・訪問サービスを組み合わせて家族が休める日を作る

介護・看護職員のターミナルケアにおける役割

ターミナルケアにおいて、介護職員と看護師は異なる役割を担います。

介護職員の役割

介護職員は医療行為を行えません。しかし、食事・排泄・入浴・体位変換などの日常生活ケアを通じて、利用者の最後の日々に深く関わります。

  • 身体ケア:食事形態の工夫・排泄介助・清拭・口腔ケア・体位変換・褥瘡予防。終末期特有の身体変化(呼吸の変化・皮膚の色・食欲低下など)を観察・記録・報告する
  • 精神的支援:傾聴・声かけ・手を握る・表情を観察する。「何か特別なことをしなければ」ではなく、ただそこにいて寄り添うことが大切
  • 環境整備:快適な温湿度・照明・静かな環境を保つ。本人の好きな音楽・写真・花など環境を整える
  • 家族への対応:家族が面会しやすいよう配慮する。家族の「何もしてあげられない」という罪悪感に寄り添い、「ここにいることが大切なんです」と伝える

看護師の役割

看護師は医療処置と日常ケアの両方を担います。

  • 医師の指示による投薬・点滴・医療処置の実施
  • 疼痛評価(NRSスコアなど)・バイタルサインの管理
  • 本人・家族への状態説明・精神的サポート
  • 多職種チームの調整役(医師・介護職・ケアマネ・家族を繋ぐ)
⚠️ ターミナルケアに携わる職員へ:ターミナルケアは職員にとっても精神的な負担が大きい仕事です。「もっとできることがあったのではないか」という自責の念を抱えることも少なくありません。チーム内での振り返り・デブリーフィング(事例検討)・上司や同僚との対話が、職員自身のケアとしても重要です。

家族が今からできること

意思確認ができるうちに話し合っておく

ターミナルケアを前にして最も後悔されることの一つが「本人の希望を聞いておかなかった」ことです。意識がはっきりしているうちに、以下のことを話し合っておきましょう。

  • 最期をどこで迎えたいか(自宅・施設・病院)
  • 延命措置に関する希望(心肺蘇生・人工呼吸器・胃ろうなど)
  • 意思決定の代理人を決める(意識がなくなった時に代わりに判断する人)
  • 葬儀・お墓・財産についての希望
  • 家族・大切な人へ伝えたいメッセージ

在宅介護の限界を正直に認める

「自宅で最期まで」という思いが強くても、介護する家族の体力・精神力には限界があります。在宅継続が難しいと感じた時は、施設や病院に移ることを「裏切り」ではなく「別の形の愛情」として捉えてください。場所が変わっても、そこに寄り添う気持ちは変わりません。

自分自身のケアも忘れない

介護する家族が倒れたら、本人にとっても大変な状況になります。ショートステイや一時的な入院(レスパイト)を活用して休息を取ることは、本人のためにもなります。

💜 家族へのメッセージ:「何もできないのではないか」と感じることがあるかもしれません。しかし、そこにいること・手を握ること・声をかけること——それだけで、大切な人の最後の時間は確かに満たされます。完璧なケアより、真心のある存在が、ターミナルケアで最も大切なものです。

体験談

👩
Aさん(52歳・女性)母のターミナルケアを在宅で経験
母・78歳・肺がん末期。在宅療養支援診療所・訪問看護・訪問介護を利用

在宅を選んだ理由:「母が『自分の家で最期を迎えたい。病院のベッドで死にたくない』とはっきり言っていたので、在宅を選びました。最初は不安でしたが、在宅医の先生と訪問看護師さんが24時間電話に対応してくれると知って、踏み切れました」

家族として感じたこと:「痛みのコントロールが一番心配でしたが、訪問医が状態に合わせて薬を調整してくれて、最後の2ヶ月は痛みで苦しむことがほとんどありませんでした。母は自分のキッチンでお茶を飲み、好きなテレビを見て、猫と寝ながら最期を迎えました。それが何よりの贈り物でした」

家族に伝えたいこと:「怖がらないで。在宅を選んでよかったと、今でも思っています。ただ、一人で抱え込まないことが大切。訪問看護師さんに電話して泣いたことも何度かありましたが、それでいいんです」

👨
Bさん(45歳・男性)父の看取りを特養で経験した息子
父・84歳・認知症+心不全。特別養護老人ホームで看取り

施設での看取りを選んだ経緯:「最初は在宅を考えましたが、私も妻も仕事があり、24時間の介護は現実的に無理でした。施設に罪悪感はありましたが、施設のケアマネさんが『ここにいることが家族への安心にもなりますよ』と言ってくれて、気持ちが楽になりました」

最後の日々:「施設のスタッフさんたちが、父のことをよく知ってくれていて。食べられなくなった頃も『今日はアイスをひとさじ食べました』って報告してくれました。小さなことでも共有してもらえることが、どれだけ家族の支えになるか」

介護職の方へ:「施設での看取りケアを担ってくれた全スタッフに感謝しています。みなさんが父の最期の時間を豊かにしてくれました。本当にありがとうございました」

👩
Cさん(38歳・女性)介護職員としてターミナルケアに初めて携わった経験
特別養護老人ホーム勤務4年目。初めて看取りに携わった時の経験

最初は怖かった:「介護士になって3年目で初めて看取りを担当しました。正直、最初は怖かったです。何をしてあげればいいのか、何が正解なのか、わからなくて。先輩に相談したら『正解なんてない。ただそこにいてあげて』と言われました」

経験して変わったこと:「その方の最期を看取ってから、介護の仕事の意味が変わりました。日常の食事介助・排泄介助・声かけ、全部が最後の日々を作っていた。その積み重ねが、穏やかな最期につながると気づきました」

これから携わる方へ:「完璧にやろうとしなくていいです。『一生懸命関わった記憶』が残れば、それがケアだと思います。自分も泣いていい。それも人間らしいケアの一部だと今は思っています」

よくある質問(FAQ)

Q. ターミナルケアと緩和ケアは同じですか?
A. 重なる部分はありますが、異なる概念です。緩和ケアはがん等の診断時から始まり、治療と並行して行われる「生き方」を支えるケアです。ターミナルケアは終末期(回復が見込めなくなった時期)に始まる「最期の迎え方」に焦点を当てたケアです。実際の現場では緩和ケアとターミナルケアを明確に区別するのは難しく、病状の進行とともに緩和ケアがターミナルケアへと移行していくイメージが近いです。
Q. ターミナルケアを始めると延命治療は一切できないのですか?
A. そんなことはありません。ターミナルケアの方針を取ることは、「方針の一つを選ぶこと」であり、あくまで本人・家族・医療チームが合意した範囲でのことです。また、ターミナルケアの方針を選んだ後でも、状況が変わったり本人・家族の希望が変わったりすれば、再度話し合って方針を変えることもできます。一度決めたら変えられない、ということはありません。
Q. 認知症の人でもターミナルケアを受けられますか?
A. 受けられます。ターミナルケアは疾患を問わず、終末期の全ての方が対象です。認知症の場合は意思確認が難しくなることがあるため、できるだけ早い段階(認知症の診断後、意思能力があるうちに)に希望を話し合っておくことが重要です。また、家族が本人の「推定意思」(この人ならこう思うだろう)に基づいて意思決定を代行します。
Q. 在宅でターミナルケアをする場合、夜間の急変はどうすればよいですか?
A. 事前に「夜間・緊急時の連絡先」を確認しておくことが最も重要です。在宅療養支援診療所(特に機能強化型)は24時間対応の往診・電話相談に対応しています。また、本人・家族と在宅医で事前に「急変時に救急車を呼ぶか・呼ばないか」「蘇生処置を希望するかどうか」についての合意書(DNAR指示書)を作成しておくと、急変時に慌てずに済みます。
Q. 家族としてターミナルケア中に何をしてあげればよいですか?
A. 「何か特別なことをしなければ」と思う必要はありません。ただそこにいること・手を握ること・声をかけること・好きだったことを話すこと——これだけで十分です。医療的なケアは専門家に任せて、家族は「その人らしい時間」を一緒に過ごすことに集中してください。また、ご自身も十分に休み、専門家(医師・看護師・ソーシャルワーカー)に悩みや不安を相談することを恐れないでください。
Q. ターミナルケアを受けながら旅行や外出はできますか?
A. 状態が許す範囲で可能です。「最後にあの場所に行きたい」「孫の運動会を見たい」という希望を実現するためのサポートも、ターミナルケアの大切な一部です。担当医・看護師・ケアマネジャーに相談すれば、医療機器を持参しての外出・外泊・旅行を実現できるケースもあります。あきらめる前に相談してみてください。
Q. 介護職員として、ターミナルケアに苦手意識があります。どうすればよいですか?
A. 苦手意識を持つことは自然なことです。死と向き合うことは、誰にとっても容易ではありません。まず「完璧にやろうとしない」ことが大切です。日常のケアを丁寧に行い、声をかけ、傾聴する——それだけで十分なケアになっています。施設での振り返り(デブリーフィング)・先輩へのスーパービジョン・専門研修(看取りケア研修)への参加も有効です。一人で抱え込まず、チームで関わることを意識してください。

まとめ

  • ターミナルケアは「残された時間のQOLを高めるケア」——延命ではなく、穏やかな最期を支えることが目的
  • 緩和ケアとの違い——緩和ケアは診断時から・治療と並行。ターミナルケアは終末期から・延命をしない選択
  • 3つのケア内容——身体的(痛みの緩和)・精神的(不安への傾聴)・社会的(費用相談・家族支援)
  • 場所は3つの選択肢——在宅(自分らしく・家族の負担大)・施設(専門ケア・安定)・病院(高度な医療)
  • ACP(人生会議)が重要——意思能力があるうちに、家族と延命・最期の場所・代理人を話し合っておく
  • 希望と現実の乖離を縮めるために——自宅での看取りを希望する方は50%以上だが、実際に自宅で迎えるのは20%程度。事前準備が実現を左右する
  • 家族にできること——「そこにいること」が最大のケア。完璧である必要はない

※本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。緩和ケア病棟の施設数データは日本ホスピス緩和ケア協会の公開情報(2024年6月時点)を参照しています。費用・制度等は地域・施設・個人の状況によって異なります。担当医・ケアマネジャー・医療ソーシャルワーカーにご相談ください。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省2018年改訂)も参照しています。体験談は実際の事例を参考に再構成したものです。


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